「相撲の太鼓って誰が叩くの?」
じつは、相撲の太鼓を叩いているのは呼び出しの人です。
呼び出しとは力士の名を
「ひがぁ~しぃ~、〇~のぉ富~士~」
と、相撲の土俵上で呼び上げている人です。
相撲中継が終わる時の、
「テンテン・・・」
というリズムが印象的ですね。
ところが、こ太鼓が叩かれいるのは相撲の終わりの時だけではありません。
今回は、相撲の太鼓がいくつかの場面で叩かれている、というお話しようと思います。
では、その相撲の太鼓の種類を見ていきましょう。
- 相撲の太鼓①触れ太鼓
- 相撲の太鼓②寄せ太鼓
- 相撲の太鼓③跳ね太鼓
- 櫓太鼓とは
の順でお話していきます。
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相撲の太鼓①触れ太鼓
大相撲が始まる前日は、太鼓の日と呼ばれています。
本場所が始まるこの日、触れ太鼓(ふれだいこ)が叩かれます。
この触れ太鼓は、
「相撲が明日から始まるよ!」
と、町に触れまわる太鼓です。
触れ太鼓は、太鼓回り、町回り太鼓、相撲触れとも呼ばれます。
「土俵祭り」の後の「触れ太鼓」
本場所が始まる前日、館内では土俵祭りが行われます。
土俵祭りとは行司が祭主となり、横綱や三役力士(大関・関脇・小結)、相撲協会の理事などが参加して行う儀式です。
土俵祭りでは、
- 土俵上の無事
- 五穀豊穣
- 国家平安
を願って行司が土俵に献酒します。
土俵祭りの最後に、呼び出し衆は太鼓を鳴らしながら土俵下を3周します。
この太鼓、歩みを止めず、そのまま町に出て行きます。
これが、触れ太鼓のスタートになります。
町に触れ廻る太鼓
触れ太鼓では、太鼓を木の棒にくくりつけ、2人が肩で担(かつ)いで町を移動。
太鼓を担いでいない打ち手は、速めのテンポで太鼓を叩いて廻ります。
触れ太鼓は相撲部屋や後援者(ひいき筋)を廻り、初日の取り組みを伝えます。
「〇〇富士には~、〇の海じゃぞえ~。」
という具合に声を出すのです。
この呼び出しの声が聞こえてくると、力士たちの気持ちも一気に引き締まるようです。
翌日から、真剣勝負の15日間が始まる訳ですからね。
「触れ太鼓」は「清め太鼓」
この触れ太鼓は、清め太鼓とも呼ばれています。
触れ太鼓が土俵を清め、そして町に出るのです。
神社で打たれる太鼓の音も、お祓いの一種であり、「魂を清めてくれる」と言うんですよ。
相撲の太鼓②寄せ太鼓
相撲が行われる当日の朝に叩かれる太鼓があります。
それが、寄せ太鼓(よせだいこ)です。
寄せ太鼓は、本場所や巡業中に毎朝叩かれます。
8時頃からの30分間、
「相撲を観に来てね!」
という誘いの太鼓が叩かれるのです。
寄せ太鼓は、一番太鼓(いとばんだいこ)、朝太鼓とも呼ばれているんですよ。
寄せ太鼓の時間
この寄せ太鼓、かつて江戸~大正時代は夜明け前の太鼓でした。
電気が一般家庭に普及する前。
夜明けと共に起きだす人々に寄せ太鼓で相撲を知らせました。
夜明け前に寄せ太鼓が鳴り響き、そして
「関取たちが場所に入ったよ!」
という二番太鼓も打たれていたのです。
それが昭和初期になると、電気が普及するにつれ、人々の生活は夜型になっていったのでしょう。
「早朝の太鼓はうるさい。」
と、苦情が来るようになりました。
それで現在は寄せ太鼓が8時頃になり、二番太鼓が無くなりました。
相撲の太鼓③跳ね太鼓
跳ね太鼓(はねだいこ)とは、相撲の終わりの時に叩かれる太鼓です。
取り組み(対戦)が全て終わったことを知らせる太鼓なのです。
また、跳ね太鼓は
「明日も相撲を観に来てください!」
という誘いの太鼓でもあります。
そのため、翌日に相撲が無い千秋楽では跳ね太鼓は打たれません。
跳ね太鼓が打たれる順番
跳ね太鼓が打たれる順番を見てみましょう。
①弓取り式
相撲の最後の取り組み(対戦)が終わると、まず、弓取り式が行われます。
弓取り式とは、結びの一番(最後の取り組み)が終わった後の、弓を使った舞いです。
結びの一番に勝った力士の代わりに勝利の舞いを踊っているのです。
②「打ち出し」の拍子木
この弓取り式が終わると、その時刻は打ち出しといって、相撲の館内には
「チョン!チョン!」
という澄んだ音色が響き渡ります。
呼び出しによって拍子木(ひょうしぎ・桜の木でできている)が打たれるのです。
③跳ね太鼓
そして、同じタイミングで外に設置された櫓(やぐら)の上でも呼び出しが太鼓を叩きます。
これが跳ね太鼓で、相撲の興行が終わったことを周辺に知らせているのです。
跳ね太鼓の音色
跳ね太鼓の音色は客が家路につき、それぞれに散っていく様を表していると言われています。
「テンテンバラバラ・・・」
と聞こえるんですね。
太鼓の打ち手の呼び出しの人は
「お客が場外へ出やすくするように」
と誘導するイメージで太鼓を叩いているようです。
櫓太鼓とは
櫓太鼓(やぐらだいこ)とは、その名の通り、櫓の上で叩く太鼓のことです。
この櫓太鼓は2種類。
ここまでに紹介した
- 寄せ太鼓相撲の当日の朝の太鼓
- 跳ね太鼓相撲の後の太鼓
が櫓の上で叩かれます。
高い櫓で太鼓を打つ
この櫓、けっこうな高さがあるんですよ。
国技館の櫓は高さ16m!
ビルで言えば4階ぐらいの高さの櫓で太鼓を打つのです。
上の画像は国技館の櫓ですが、てっぺんから枝のような棒が出ていますね。
先に麻が付けられているこの棒。
出し幣(だしべ)と呼ばれ、天に場所中の晴天を願うものです。
かつての相撲は、完全な屋内ではなく、仮小屋で行われていました。
雨風は相撲興行の大きな敵だったのです。
「呼び出し泣かせ」の櫓
この櫓、丸太を組んだもので、ロープで太鼓を引っ張りあげるのに苦労します。
失敗して太鼓を落としてしまうとも。
呼び出しさん泣かせの櫓ですね。
それが平成7年秋、国技館の櫓は鉄製になり、エレベーターで昇ることができるように変わりました。
他の会場の櫓は、現在も相撲が開催されるごとに建てられ、はしごで登っているんですよ。
さいごに
相撲の興行が始まることを知らせたり、場所中の節目に叩かれる太鼓。
呼び出しに採用された人は、すぐに太鼓の稽古を始めるんですよ。
全部をうまく叩けるようになるには5年かかるそうです。
それぞれの呼び出しは、自分の個性やリズム感で太鼓を叩きます。
そのため、相撲の太鼓には腕前の差がでてきます。
太鼓の名手
古くは「太郎」という呼び出しの叩く太鼓の音色が絶品だったそうです。
太郎さんは昭和39年に引退していますが、昭和44年には勲六等を受賞するほどの人です。
引退後も色々なイベントに呼ばれ、太鼓を披露していたようです。