お城のことを知りたくて調べていると、土塁(どるい)という言葉がでてきます。
この土塁とは、一体お城のどんな役に立っている物なのでしょうか?
それでは、この土塁の役割や良い土塁の作り方について見ていきましょう。
鉢巻き(はちまき)をした土塁
腰巻きをした土塁
というものもあるんですよ。
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土塁とは城の砦(とりで)のこと!
土塁の塁は、とりでを意味する漢字です。
つまり土塁とは
土作った砦(とりで)
なのです。
この塁という漢字のつくりを見てみると
土をたくさん重ねていく様子
が感じられると思います。
土塁とは城を守る役割を持った砦。
土を高く盛り、斜面をつけた土塁が、城を敵の侵入から守るのです。
土塁とは堀とワンセットの設備
土塁は一般的に、お城の堀の内側にあります。
土塁とは堀とワンセットの設備と考えても良いでしょう。
つまり、土塁は堀と一緒になり、お城を守る最前線として機能しているのです。
土塁を作るためには、土が大量に必要です。
この土、一体どこから運んでくるのでしょうか?
実はここでも、土塁と堀はワンセットになっています。
堀を作る時には、地面(土)を掘らなければいけません。
この時、堀の脇には大きな土の山ができるわけです。
この土を利用して土塁が作られます。
土塁の高さや角度
土塁とは城の防御を担うものです。
そのため土塁が城の防御機能を発揮するために
高さ
角度(斜度)
が大きな意味を持つことになります。
このことに触れている武教全書(ぶきょうぜんしょ)という古書を基に、土塁の理想形を探ってみましょう。
土塁の高さ
土塁の高さは色々ありますが、理想とされたのは3間(約5.5m)程度です。
そして土塁の上部は平らになっています。
この平面の幅は2間(約3.3m)で、ここには塀が設置されることが多くありました。
塀を立てた内側は、城を守る兵や馬が動けるスペースになっています。
このスペースは武者走(むしゃばしり)と呼ばれました。
なんだか格好のよい言葉の響きです。
このことは、1600年代中期に記された武教全書(ぶきょうぜんしょ)という本で説明されています。
私たちの知る多くのお城は
戦国時代~1600年代初期
に築城されています。
この築城のラッシュ期の後に記された、武教全書の内容は
完成された築城技術のマニュアル
と考えて良いでしょう。
土塁の角度
土塁は台形に作られます。
このときの土塁の角度(斜度)は、武教全書のなかで、45度が基本とされています。
45度は土を積んで崩れない限界の角度です。
また土塁は土だけだと崩れやすいんですね。
そのため土塁を作る土の中には、粘土と砂利が混ぜられ強度アップがされました。
「粘土を混ぜた層」と「砂利を混ぜた層」を何層も重ねた土塁も多くあります。
土塁の角度をイメージすると
土塁の角度を、スキー場に置き換えてイメージしてみますね。
スキー場の急斜面(上級者コース)は35度程度の坂になっています。
下を見下ろすと、恐怖を感じるほど・・・。
40度以上の斜度を持つスキー場は稀なのです。
それほどの急斜面を武士が駆け上がるのは至難の技と言っても良いでしょう。
なにしろ戦で身につける鎧は20~30kg。
雑兵が腹に巻いている武具でさえ10kg程度の重量がありますからね。
そんなハンデがありながら、土塁を登る兵。
そこに上から攻撃されたら、堪(たま)りませんね。
戦いの場では、土塁の上にいる兵が大きなアドバンテージを持っているのです。
良い土塁の作り方は?
土塁は城を守るために進化していきました。
城を守る兵にはやさしく、城を攻める敵兵には突破しにくく改善されていきました。
土塁の登り降り
土塁は城の側の兵たちにとって登りやすく、敵にとって登りにくい必要があります。
一体どうすればいいのでしょうか?
それは城内側の土塁の角度を緩やかに、城外側の角度を急斜面にすれば解決しました。
さらに城内側には土塁を上る階段が1本つけられました。
この階段では、兵の行き来が渋滞したので階段を2本に増加。
さらには、城側の斜面すべてを階段にした土塁も表れます。
土塁と芝の関係
前述のマニュアル武教全書では、土塁の芝についても説明されています。
ここまで解説してきた土塁は「たたき土塁」と呼ばれています。
土に粘土や砂利を混ぜ、強度を得るために叩いて固めたものです。
土塁の角度(勾配)は45度で精一杯。
ところが、この土塁に芝を植えると強度がさらにアップします。
芝が土塁に根を張ってくれるのです。
これで、60度くらいの斜面まで可能に。
芝が、敵の城内への侵入を防ぐ力となったのです。
土塁の「鉢巻き」と「腰巻き」とは?
土塁には「鉢巻き(はちまき)」と「腰巻き(こしまき)」というものがあります。
これは土塁の一部分を石垣で覆ったものなんですよ。
写真の上部が鉢巻きで下部が腰巻きの石垣です。
◆鉢巻きの土塁とは?
まず、鉢巻きの石垣。
土塁の上部の横ラインを石垣で固めてしまうのです。
運動会などで使う、あの「鉢巻き」のイメージです。
これは土塁の上に建築物を乗せる時の基礎として有効でした。
土塁の上に、壁を作ったり、櫓(やぐら)を作った時に崩落を防いでくれるのです。
◆腰巻きの土塁とは?
次は、腰巻きの石垣です。
こちらは土塁の下のラインを石垣で固めてしまいます。
腰巻き石垣には、土塁の土が下方向に流れ出るのを防ぐ効果がありました。
土塁の外側の堀が水堀だった場合、この効果は絶大ですね。
◆「鉢巻き」+「腰巻き」の土塁
上の写真のように「鉢巻き」+「腰巻き」の土塁もあります。
効率よく石垣の効果を得たい
そんな場合に使われました。
石材の産地が少ない東国に多くあるんですよ。